目次
台輪とは
台輪には主に3つの意味があります。
(1)家具の底辺部で、本体部分を支える台座。
(2)社寺建築において、構造を安定させるために使用される平たい横木。
(3)鳥居の柱上部で、横木を支える円盤状の部材。
台輪という言葉は、社寺建築にルーツがありますが、こちらではソファなど、家具の台輪を中心に種類や役割、由来などをご案内いたします。
収納ソファの台輪
店舗や飲食店向けの家具において、台輪と言えば、ファミリーレストランに良く設置されている収納ソファの名前が上がります。収納付のソファは、別名レストランソファと呼ばれるほど、ファミリーレストランなどでは数多く採用されています。
収納ソファは、総張りソファの座下部分を靴の衝撃を吸収する台輪構造にして、さらに台輪内部を収納構造にしたものです。業務用途の家具は不特定多数の方が利用するため、メンテナンス性は商品の重要な要素となります。全て張地で包まれた総張りソファは、一部の破損でも丸ごと取り替える必要がありますが、台輪ソファは、座下部の分離構造により、シート部分または破損台輪だけを取り替える事ができます。
収納付の台輪ソファは、台輪部分の中空構造を利用して、座面を取り外すと中が収納として利用できます。店舗の備品やお酒などをストックできるため、大変人気があります。意匠性も高く、シート部分は様々なデザインと張地から選べ、台輪の色や素材も、お店のイメージに合わせた多彩な仕上が可能です。
台輪の主な仕上は、化粧板貼り、レザー張り、塗装仕上などがあり、それぞれ豊富な色柄からお選び頂けます。三面仕上の製品は、価格を抑えるために背裏の仕上を施さない仕様で、壁面に設置する場合にお勧めの製品です。
関連ページ:ソファ台輪板サンプル請求
家具の台輪
ご家庭向け家具では、主にタンスや本棚等の箱物家具が、台輪を採用しています。リビングで台輪を使用する箱物家具は、サイドボード、本棚、リビングチェスト、TVボード等があります。衣類を収納するワードローブやチェストは、床に溜まりやすい湿気を回避するため、多くの製品で台輪を採用しています。
キッチンで使用する家具は、施工性と機能性の両面から、台輪が良く採用されています。 システムキッチンのユニット家具は、現地で台輪カットにより高さを微調整して納入する事があります。本来デッドスペースとなる台輪部分を引き出し収納とする製品も人気があります。キッチンボードは、使いやすい高さに、台輪をカットして調整する事があります。
台輪の役割
家具における台輪は、様々な役割を果たしています。 家具の台輪は、4辺を垂直に立てた板が接地するため、床の凹凸の影響を受けづらく、本体を歪みから守る役割があります。
台輪は板で囲まれた中空構造の為、本体と床面の間に生じた空間により、床面に溜まる湿気や結露から家具本体を守る事ができます。台輪は、靴や掃除機が本体に当たるのを防ぎ衝撃を吸収する役割があります。台輪が傷んだ場合、台輪のみを取り替える事で、家具を長く使用する事ができます。
家具が沈み込むような厚手のカーペットから、台輪で底上げする事により、引き出しや扉がカーペットに干渉する事を防ぐ事ができます。 台輪をカットする事により、家具の高さ調整をする役割があります。台輪は一見目立ちにくい部材ですが、家具を支え、長く快適に使用するための様々な重要な役割を担っています。
台輪の由来
日本建築の用語をまとめた初の辞書である日本建築辞彙によると、台輪とは「すべて物の上、もしくは下にある平(たいら)き木にして、上物を支承し、また下物を蓋(おお)う意ある者なり(※1)」と解説されています。意味は「上の物を下から支え、下の物を覆う平たい木材の事」となります。
台輪という言葉は、社寺建築である多重塔での初出が定説となっています。現存する最古の木造建築である法隆寺の五重塔では初層の側柱の上部に台輪が用いられ、横揺れを防ぎ、大斗と言う軒を支える部材を安定させる重要な役割を担っています。
鎌倉時代になると、日本の伝統的な建築様式の一つである禅宗様または唐様の寺院にも、台輪が用いられるようになります。後に、台輪は宗派を問わず様々な社寺に使われるようになりました。神社の山王鳥居、稲荷鳥居にも円盤状の台輪が用いられています。また戦国時代に、武士は指物と呼ばれる小旗を身体に付けて戦いに出ました。その指物に使われる横木も台輪と呼ばれたそうです。(※2)
※1参考文献:中村達太郎,太田博太郎「日本建築辞彙」,中央公論美術出版,2011年 ※2参考文献:松村明,「デジタル大辞泉」,小学館,2020年8月